クラブン株式会社
代表取締役 ジョージ 伊澤
「役に立って
なんぼ」
現状を超え続ける
クラブンの哲学
オフィスで使う文具から、家具、IT、内装施工まで──。
クラブン株式会社は、働く環境を“まるごと設計”する総合オフィスサプライ企業だ。1951年に倉敷の市場の片隅で文具を売り始めてから74年。いまや年商100億円を超える地域の中核企業へと成長した。その歩みを支えてきたのは、代表・伊澤正信(通称:ジョージ)の「役に立ってなんぼ」という哲学である。
商品を売るだけでは終わらない。顧客の課題を聞き、最適な環境を提案し、期待値を超えていく。挑戦の起点はいつも「今のままではダメ」という危機感だ。公共施設から民間オフィス、そして大型文具専門店「うさぎや」まで、クラブンはあらゆる現場で信頼を積み上げてきた。
嘲笑をバネに変えた創業の物語、受け継がれる覚悟と感謝の哲学。その歴史の積層は、単なる企業成長の記録ではなく、地域とともに歩み、必要とされ続けるための“生き方”そのものだ。
現状を超え、次の時代を見据えるクラブンの姿に、地域企業の未来が重なる。
2025.06より参加クラブン株式会社 代表取締役 ジョージ 伊澤 様
- 氏名
- 代表取締役 ジョージ 伊澤
- 会社名
- クラブン株式会社
- 出生年
- 1951年
- 座右の銘
- 犬のように生き 神のようにありたい
- 略歴
-
- 1974年 松下電器産業(現パナソニック)入社
- 1978年 倉敷へ帰郷、クラブン入社
- 1980年 常務取締役・営業本部長に就任
- 1990年 代表取締役に就任
- 1995年 「うさぎや」1号店開店
- 2025年 現在 年商100億円企業に成長
市場の片隅から年商100億へ。総合力で地域を支える
クラブン株式会社は、岡山県倉敷市を拠点に、文具から家具、IT、内装工事までオフィス環境に関わるあらゆる領域をワンストップで提供する総合オフィスサプライ企業だ。
創業は1951年。代表取締役・伊澤正信氏(通称:ジョージ)の父が立ち上げた「倉敷文具」が前身である。祖父は満州から引き揚げた後、倉敷の駅裏に『伊澤洋行』を構え、父はシベリア抑留から帰還後に就職。翌年に独立して「倉敷文具」を興す。市場に通う人々を相手にボールペン、そろばん、通い帳といった日用品を売る日々が始まった。創業から半年後、妻が結核を患い隔離される過酷な時期を経ながらも、事業は少しずつ地域に根を張っていった。
転機は1975年。年商5億円規模だった会社が、水島工業地帯の発展を見据えて笹沖へ移転する。周囲が驚くほどの大型投資だったが、この決断が飛躍の礎となった。インフラ整備が進み、成長する地域の中心に位置を占めたことで、公共・民間双方の案件を積み上げていく体制が整っていく。
地域を軸に基盤を固めた同社は、1995年、業界初のロードサイド型大型文具専門店「うさぎや」を開店。この店舗がクラブンの知名度を一気に押し上げた。北海道から九州まで企業や同業者の視察が相次ぎ、メーカーからも注目を集める。BtoC事業は資金繰りを改善し、ブランド力向上にも寄与。クラブンは地域総合サプライヤーとして確固たる地位を確立していく。

「文房具で儲かるか」
屈辱がジョージという経営者をつくった
ジョージが倉敷へ帰郷したのは27歳のとき。その数年前、彼は松下電器産業(現パナソニック)で4年弱を過ごし、松下幸之助の経営哲学を叩き込まれた。研修センターでの座学、販売店での接客、工場ラインでのモノづくり。毎晩レポートを提出する日々の中で、彼が得た最も大きな学びは、“プロセス”の価値だった。成果を出しても手順を省けば叱られ、逆に手順を守って失敗すれば「次はうまくいく」と褒められる。結果ではなく、過程を評価する文化 この経験が、今の経営判断の土台になっている。
だが、倉敷に戻って待っていたのは、松下時代の半分という給料と、業界での立ち位置も見えない中小企業の現実だった。失望と焦燥が入り混じる。
決定的だったのは、父に連れられて行ったラウンジで掛けられた一言。父の知人が酒に酔って軽口を叩いた。「伊澤さん、文房具売って儲かるんか!」。猛然と腹が立った帰り道、父に「バカにされて気分が悪くないのか」と尋ねると、父は淡々と答えた。「そんなもんじゃ」。今でも目をつぶれば、その夜の光景が浮かぶ、とジョージは言う。
「もうなんせ、大きくせんといかん。儲けんといかん、と思った。今に見てろ、と。中小企業に夢がなかったら、何があるんだ!と腹を括った」
バカにされた屈辱。それが、ジョージという経営者を形作る核となった。スリーピーススーツを着こなし、社員にも業者にも「社長」ではなく「ジョージ」と呼ばせる。音楽を愛し、映画を愛し、人を愛する。その軽やかな佇まいの奥には、深い思索と覚悟が潜んでいる。
29歳で常務取締役に就任し、営業本部長として実質的な経営を担い、39歳で代表取締役に就任。当時の年商は約30億円。そこから四半世紀をかけて、売上を3倍に伸ばした。

HYPE(熱狂)
「今のままではダメ」がスタートライン
ジョージが経営の軸に据えるのは、「今のままではダメ」という危機感だ。
「数字は出た瞬間、過去のものになる。大谷選手はMVPを取っても満足せず、次の年も実績を積み上げる。今年はどうなんだ、来年はどうするんだ その気持ちで常に走っている。2024期、売上が初めて100億円に到達したが、それももう過去のこと。”今のままではダメ”というのが、常に僕のスタートライン」。
「HYPE(熱狂)」という言葉をどう捉えるか尋ねると、ジョージは笑って言った。
「そりゃ、常に熱狂してるよ。みなぎる生命力、解き放つパワーという感じでね(笑)。熱狂というのは、生まれ持った性分だと思う。負けて悔しくない人もいれば、悔しい人もいる。そこが分かれ目だ」。
理想を追い続ける。失敗しても次がある。その覚悟が、クラブンという組織を前に進ませ続けている。
「僕の覚悟は、死ぬまで生きることだ」
当たり前のようで、当たり前ではない。この言葉に、ジョージの熱狂のすべてが凝縮されている。



“オフィスのこと、まるごと”
総合力で生み出す信頼とブランド
クラブンの最大の強みは、オフィス環境に関わるあらゆる商材を自社で提供できる「総合力」にある。文具だけ、家具だけという専門店は多いが、すべてを一括で提案できる企業は限られる。
その総合力を裏づけるのが、全国に誇る実績だ。キヤノンの全国ディーラーランキングで5位、コクヨでは3位。地方企業でありながら、大都市圏に引けを取らない全国レベルの取引量を誇る。
1995年に開店した「うさぎや」は、日本初のロードサイド型大型文具専門店として、当時の業界に衝撃を与えた。ジョージは全国各地に招かれ、講演を重ねたという。ブランディングの効果も大きく、採用活動でも「あ、うさぎやの会社か」という認知が入口となる。メーカーからの信頼も厚く、「うさぎやを知らない文具店は、その県でナンバーワンじゃない」 そんな評価が、業界内で定着している。
印象的な実績としては、放送局や競艇場、銀行本店など大型公共案件が挙げられる。こうした案件は、ゼネコン、設計事務所、コンサルタント、発注者との複雑な調整を経て、3~5年をかけて練り上げられる。地道な積み重ねの先に築かれる信頼こそ、クラブンの最大の資産である。
主体性と一体感 人を育てる組織文化
信頼を築くのは「人」そのものだ。クラブンという組織の底には、現場を動かす“仲間”のエネルギーがある。
特徴的なのは、17の同好会と部活動が存在すること。ゴルフ、釣り、軽音、野球 ジョージは、そのほとんどに顔を出す。
「自分が行くと気を使わせるんじゃないかと思うこともある(笑)。でも、一緒に遊んで、酒を酌み交わす。そこで生まれる距離の近さが、組織の一体感を支えているんだと思う。そしてもう一つ大事なのは主体性。この両方がチームには必要。自分の人生なんだから、主体的に動いてほしい」。
次代の組織づくりを担う立場として、人と組織をどう考えるのか ジョージの娘であり、執行役員でもある伊澤京子氏は、求める人物像についてこう話してくれた。
「困難な仕事も自分で楽しめる人。自分の役割を自分で見つけようとする人がいいなと思います。貴重な人生の時間を過ごす場なので、それを楽しむぞ!って思える人じゃないと」。
クラブンは扱う商材が多岐にわたるため、誰もが得意分野を見つけられる。制度面では資格取得支援制度を設け、業務に関連する約50項目の資格取得を後押しする。
うさぎやでは、新入社員にも担当コーナーを任せる。 一人が3~4分類の商材を受け持ち、仕入れから陳列、販促まで責任を負う。
「自分で考えて売り場を作って、お客さんが喜んでくれると、やっぱり次の力になる」。
営業部門でも目指すのは、すべてを扱える「オールラウンダー」。オフィスに関わるあらゆる商材を提案できる力こそが、顧客との信頼を育む基盤になっている。
伊澤京子氏は、クラブンで働く魅力をこう語る。
「シンプルに、とても明るく元気な風土なので、ポジティブに物事を捉えようとする文化があると思います。同好会とかもたくさんあるので、部門の垣根を越えて仲間ができる」。



覚悟とバランス
生かされていることを知る
ジョージがリーダーシップの要諦として挙げるのは、「覚悟」。尊敬する松下幸之助の詩「道」の一節を引きながら、自らの言葉で語る。
『自分には与えられた道がある。狭いときもあれば、広いときもある。登りもあれば、下りもある。しかし、覚悟を決めて希望を持って歩むならば、必ず道は開けてくる。そしてそこに本当の喜びが生まれる』
「覚悟を決めてやろうと思った瞬間に、新しい能力が生まれる。やれるかどうかじゃない。やると決める。そこからすべてが動き出すんだ」。
伊澤京子氏もまた、「生かされている」という感謝の念を、幼いころから繰り返し聞かされてきた。そして、“宿命”を受け入れること。それが今の彼女のリーダーシップの核になっている。
父の娘として生まれたこと。クラブンという会社に関わること。それは自分で選んだわけではない。だが、だからこそ「生かされている」という実感がある。
「根っこに『おかげさまで』という思いがある。世の中に自分が“生かされている”ということを、ちゃんと感じられること。それを忘れたら、人も会社も続かない」。
一方で、ジョージが若い世代に伝えたいのは「バランス感覚」だ。
「今着ている服だって、誰かが糸を紡ぎ、縫い、運んでくれたからある。自分だけで生きているわけじゃない。他人の幸せを願う心を持てるかどうか。それがバランスや。
マザー・テレサは世界平和を問われたとき、『まず、あなたの家族を愛しなさい』と答えた。幸せになる秘訣は、他人の幸せを願うこと」。
覚悟と感謝。その二つを軸に、親子はそれぞれの場所で組織を導いている。
宿命を受け入れ、未来を切り拓く
クラブンが倉敷にあるのは、偶然ではない。祖父と父から受け継いだ系譜 。
「これは宿命なんだ。僕が選んだわけじゃない。祖父がこの地を選び、父が意思を継ぎ、僕が受け継いだ。宿命は受け入れざるを得ないもの。問題は、そこでどうするかだ」
地域に必要とされる企業であり続けること それが、宿命を覚悟に変える道だ。
「役に立ってなんぼ。それが僕の基本的な立ち位置だ」。
この言葉に、クラブンの精神が凝縮されている。役に立ち続け、期待を超え、感動を生み出す。その先に、企業の成長がある。
創業から74年。市場の片隅から始まった小さな文具店は、今や地域を代表する総合オフィスサプライ企業へと変貌を遂げた。
そして今、バトンは次の世代へ 。伊澤京子氏をはじめ、若い世代が次の挑戦を始めている。その象徴が、うさぎや30周年の記念プロジェクトだ。2025年10月にはカモ井加工紙とコラボし、全店舗をマスキングテープで装飾。11月にはイオンモール岡山で大型イベントを開催した。
「人生を楽しむというのは、楽をすることじゃない。困難も喜びも、全部キャッチしていくこと。そうすることで、人生は充実する」。
伊澤京子氏の言葉は、父の哲学を受け継ぎながら、自身の言葉として息づいている。
宿命を覚悟に変え、覚悟を希望に変える。世代を超えて続くその連鎖こそ、クラブンの未来を照らす光である。











